宇宙戦争(ネタバレ感想)
スピルバーグ監督で、トム・クルーズ主演の映画「宇宙戦争」を1回だけ見たねずママの、とりとめのない感想です。読んでもあんまりためになりません。ネタバレですのでご注意ください。そしてたぶん映画を見た人しかわからない書き方になっちゃってると思いますが、そのへんもご了承ください。
なんで「宇宙戦争」って日本語のダサいタイトルなの?原題全然違うし。カタカナで「ウォー・オブ・ザ・ワールズ」にしとけばいいじゃないの。でもって、ぜんぜん「宇宙戦争」じゃないよ、これ。一方的にやられてるって感じ。主人公逃げ回ってばっかりだし。トム・クルーズが世界を救うんじゃなかったの?だいたいあの宇宙人って、なにがしたかったのかよくわかんないし、あんなオチで終わるなんて、最悪。っていうか、腹立った。スピルバーグの大作だと思って期待して見たのに、とんだ駄作だ金かえせー。
という感想を持った人が多いかもしれない、と思った「宇宙戦争」でした。そういう人達でも、映像の「すごさ」には満足しているでしょうけど。
原作知らずに見たら、やっぱり怒るかな……。あのオチでなければ「宇宙戦争」じゃないよなぁ、と思いつつも、現代の映画観客相手には違うラストを用意しているのかも、とちょっぴり期待していたわけですが……やっぱり宇宙人は地球のウィルスで死んでしまいました。
いっそのこと原作通り19世紀末を舞台にすればいいのに、と私は公開前に思っていましたが、あとで思い直し。だってそうするとどうしても過去の話、歴史劇みたいで観客から距離感があります。原作発表当時にはあれが「現代」だったわけですから、日常生活に突然襲いかかる恐怖を表現するには、今の「現代」の話とする方が、むしろ原作の意図にそっていると思います。
スピルバーグはよほど「宇宙戦争」が好きなのか、この映画、ある意味ものすごく原作を大事にしている、原作のテイストを忠実に再現している、という気がしました。リメイクの元映画、1953年の「宇宙戦争」の有名な場面もそのまま、あるいはアレンジして再現しています。そのあたりに好感を持てるか、それとも今の世には合わないと思うか。
原作で描かれているのは、未知の相手に突然攻撃され、一方的にやられっぱなしでなにもできない、ただ逃げるだけの恐怖。非常事態には、ふだんの法と秩序、道徳は通じない、自分のために他の人を犠牲にしている人間の姿です。主人公も例外ではありません。
主人公にも観客にも、はっきりした事態が把握できません。情報も自分が手に入れられる範囲のもの、しかも本当かどうかわからない……非常にリアルです。あれが何者なのかを知るよりも、とにかく逃げて生き延びることが大事です。 ウェルズは、地球の支配者然としている「奢れる人間」への批判、また当時のイギリスの帝国主義への批判をこめてこの作品を書いたようです。(私のようなぼーっとした人間が読んでもそうとわかるくらい、はっきり書かれていますよ)物語で火星人が人間に対してしていることは、人間が他の生物にしていることと同じです。なにもわからないままに襲われ、殺され、あるいは捕獲されているわけですから。
だからこそ、原作に忠実であろうとすれば、この話は「人間の知恵と勇気で火星人を倒す」という後味スッキリの筋描きにはできないのです(すでに「インデペンデンス・デイ」でやっちゃってますし)。原作通り、ウィルスです。小さい小さいウィルスです。人間よ謙虚になれ、地球上には他にも生物がいるのだ、ということです。
「インデペンデンス・デイ」といえば、映画の最初のほうで、住宅地が映ったときに、軒先に星条旗が出ていたように思います。また、その後の場面で父親が大きな音に怯える娘に「あれは独立記念日の花火だよ」という台詞もありました。つまり、「独立記念日」(「インデペンデンス・デイ」)の出来事だったんでしょうか。例の映画を意識して?
トライポッド!あのマシンが何台も現れてノシノシと進んでいくさまは、こわかったです。と同時に、よくぞ映像化してくれた、とも思いました。旧作はなにか技術的な事情(あるいは予算の問題?)により、三本足を諦めて、空中に浮かぶ宇宙船のようなものにしたそうですが、(あれはあれで素晴らしかったです)今回は原作のイメージどおりのマシンが動いていますから。この映画の一番の魅力は、トライポッドの登場場面の映像と言ってもいいくらい。宇宙人がタコみたいじゃなかったのは、残念でしたけど(笑)。いつも思うんですが、どうして映画に出てくる「知能の高いエイリアン」は、人間とどことなく似た姿をしていることが多いんでしょうね。その描写こそ、人間の奢りだと思います。タコとかミミズに似たのでも、あるいは岩とか水とかに似たものでもおもしろいのに。
オグルビー。この人の名前は、原作の最初のほうに出てきます。主人公(原作では物書き)といっしょに火星観察したりする、天文学者です。隕石と共に落ちてきたUFOに友好的なファースト・コンタクトを試み、最初に殺されてしまう気の毒な人達のひとりです。でも映画のオグルビーの性格や行動は、原作の「副牧師」と「砲兵」を合体させてあるみたいです。このふたりは主人公に嫌悪されているわけですから、そんな人に名前を取られて、ほんとのオグルビーがかわいそうだと思いました。
赤い植物。これも原作に出てきます。話の伏線ですが、映画では気味悪さが出ていてよかったです。ただ、人の血液を肥料にするなどとは、どこにも書いてなかったような気がしますけど。
船で逃げる場面も旧作映画にはなく、原作からのアレンジのようです。ただしこれは主人公ではなく、主人公の弟が経験したことです。軍艦「サンダーチャイルド」は出てこなかったですね。
最初と最後のナレーションや、ろくろ首みたいな偵察スコープ?は旧作映画とそっくりです。でもあのスコープの場面、なんだか「かくれんぼ」みたいで、私にとっては緊迫感のある場面と言うよりは、息抜き場面みたいに思えました。あ、斧なんかで壊れるわけないだろうというツッコミはNGです。旧作に斧で壊す場面があったから斧なんです(笑)。
ラスト近く、倒れたマシンの入口が少し開いて、宇宙人の手が這い出してきて、やがて動かなくなる……あれも旧作そっくりです。ただし、旧作ではそこで見えるのは手だけですが、今回は断末魔の宇宙人の姿を映し出していました。きゃー。あっ、そうか。この場面をやりたかったから、ちゃんと手がある宇宙人でなきゃだめだったんですね。納得。
というわけで、個人的には「原作知ってたから怖さは半分、だけどジェットコースターのような迫力があって、あといろいろおもしろかった」映画でした。字幕で見たんですが、ビデオが出たら吹き替えで見たいです。